「説明責任」とはどのようなものか

 ここでは、「ソフトウェア品質説明制度」で述べられている「説明」とは何かについて、解説します

  • 「製品やサービス」の品質については、それらの提供者が、一定の品質を確保する努力を行っていることが普通です。また法律的には、製品利用者が損害を被った場合に製造者に損害賠償を請求したり、そこまで行く前に製造者が市場にある製品を回収(リコール)したりすることもあります。利用者が使ってみたときの不具合や不満等の感想は、製造者や行政機関の相談窓口に寄せられ、製品改良に反映されることが予想されます。
  • このような結果、製造会社は自己の製品についてのノウハウを持つようになり、クレームが生じないようにする品質管理の知識、スキル、ノウハウを身に着け、製品品質に自信を持てるようになります。もちろんこの自信の裏打ちとしては科学技術的に行なわれた実験の結果、理論的確認の結果、コンピュータシミュレーションの結果などもあります。
  • このような多くの既成の要素があるので、「わが社は専門家として十分なことをやっている、非専門家による外部からのチェックや監査は無用」という自負がある会社が出てきます。しかし、消費者や一般社会から見れば、そうした自負は、「自分で作った基準に基づき、自社の関係者が、自分たちにだけ真意がわかるような方法で調べ・告知しているだけ、結果が妥当なように称しているだけ」としか見えないかもしれませんそのため、社会的な信頼を広く獲得するためには、出来るだけ客観的な立場からの「品質説明」が求められます。
  • また、製造企業の分業が進んだ中では、その製造過程の全体を包括して、品質がどうなっているか、最適な状態にあるかどうか、を見通しにくくなっているという指摘もあります。現場の自負や努力と共に、第三者的に鳥瞰する視点が必要と言われるゆえんです。
  • 近年は、消費者の安全、安心、快適が重視され、他方では製品の本当の品質は消費者から見えにくくなっていることが指摘されます。そのため、製造者の事故に対する責任の程度が重くなると同時に、「なぜそのような事故がおこったのか」の説明が強く求められるようになりました。
  • 製造物ではありませんが、米国政府内では、従来「政府会計局」と名乗っていたお役所が「一般説明責任庁」となり、説明責任が重要視されるにいたった時代を象徴することとなりました。元々英語のアカウンタビリティ(説明責任)は、会計責任という言葉でした。日本の会計検査院のホームページにある研究調査要約文書では、次のような説明をしていますが、ここに示されたような動きが「説明責任」を一種の時代のトレンドとしています。
    • 「(米国等での動きをうけて、)我が国の会計検査院に対しても,正確性・合規性といった伝統的な基準だけでなく,経済性(economy),効率性(efficiency),有効性(effectiveness)のいわゆる3つのE,あるいは,政府プログラムの結果の評価,支出に見合った価値の実現などの規準を含めた拡大された検査(expanded scope audit )基準による会計検査を実施する必要性が各方面から求められている。
  • Wikipediaの「説明責任」定義は、次のように(2013-09-18にアクセス)、より広い視点での定義を示しています。
    • 「説明責任とは、政府・企業・団体・政治家・官僚などの、社会に影響力を及ぼす組織で権限を行使する者が、株主や従業員(従業者)、国民といった直接的関係をもつ者だけでなく、消費者、取引業者、銀行、地域住民など、間接的関わりをもつすべての人・組織(ステークホルダー:stakeholder、利害関係者)にその活動や権限行使の予定、内容、結果等の報告をする必要があるとする考えをいう。」
  • この定義の文面でははっきりしませんが、消費者に生活を支える「製品」を提供する製造者にも、同様の必要性が求められると思われます。
  • 以上のように、現在使われている「説明責任」という考え方は、日常用語の「説明する責任がある」という意味を越えて、社会的な責任を果たすことが必要だという意味を強く持っていることに注意してください。製造物責任法(PL法)の考え方とも通じるものがありますね。なお、「品質説明制度」では、「説明」の手段として、その説明の品質が高いことを保証する製品認証的なアプローチを想定しています。